第19編: ルーパ – 形とそれを越えたところ

第19編: ルーパ – 形とそれを越えたところ

他の多くの職業と違って、トゥルクには、仕事内容が明記されていない。頼りにするのは、何世紀もの間、知らないうちに積み上げられた期待とあまりに偏った思い込みの山である。ある子どもに「トゥルク」というラベルが貼られたなら(チベット仏教の師の生まれ変わりであるという認定)、その子は、すべての時間とエネルギーを勉強と修行に費やすことによって、その系譜と伝統と何であれ受け継いだ精神の遺産を守っていくことが自動的に想定されるのだ。勉強や修行をしていないときは、新しい寺を建てたり、経典を印刷したり、多くの仏像やタンカの制作を依頼することがトゥルクに期...
第18編: お不動さんを待って

第18編: お不動さんを待って

毛氏は、背が高く、肩幅のひろい、体格のいい中国人だった。年齢はもう70代で、頭は一方の耳からもう一方の耳までのうすい白髪を除いて、はげていたが、生き生きとして赤みがかった顔色と、お茶目な笑顔は、いつも面倒なことを起こしているいたずら好きのティーンエージャーのような雰囲気をかもし出していた。 ところで、私のいっている毛氏は、何百万という中国人をどう猛な封建主義の束縛から解放したと称賛され、文化大革命という無慈悲で取り返しのつかない愚行をおこなったことで批判された湖南省出身のあのもうひとりの毛氏とは、まったく別の人物である。...
第17編: お話 終わりのない結び目をほどく

第17編: お話 終わりのない結び目をほどく

やぁ、お月さん!おまえさんは、何を食べるのかね? 「僕は卵を食べるのさ」と、月は答えた。 卵はどこだい? 「テーブルの上さ」と、月は答えた。 テーブルはどこだい? 「火で燃やされてしまったのさ」と、月は答えた。 火はどこだい? 「水で消されたのさ」。 水はどこだい? 「牛が飲んだのさ」。 牛はどこだい? 「地面の中へ消えたのさ」。...
第15編: 恋

第15編: 恋

第15編: 恋 取りつかれるとか、夢中になるというのは、よいことでもありうるが、誰が夢中になっているのか、夢中になる対象が誰なのかということにもよる。シッダールタに夢中になっているのなら、それはとても幸運なことである。崇高な人にそのような感情をもつのは、その人に品位と、よいカルマのつながりがあるということなのだ。...