第18編: お不動さんを待って

第18編: お不動さんを待って

毛氏は、背が高く、肩幅のひろい、体格のいい中国人だった。年齢はもう70代で、頭は一方の耳からもう一方の耳までのうすい白髪を除いて、はげていたが、生き生きとして赤みがかった顔色と、お茶目な笑顔は、いつも面倒なことを起こしているいたずら好きのティーンエージャーのような雰囲気をかもし出していた。 ところで、私のいっている毛氏は、何百万という中国人をどう猛な封建主義の束縛から解放したと称賛され、文化大革命という無慈悲で取り返しのつかない愚行をおこなったことで批判された湖南省出身のあのもうひとりの毛氏とは、まったく別の人物である。...
第17編: お話 終わりのない結び目をほどく

第17編: お話 終わりのない結び目をほどく

やぁ、お月さん!おまえさんは、何を食べるのかね? 「僕は卵を食べるのさ」と、月は答えた。 卵はどこだい? 「テーブルの上さ」と、月は答えた。 テーブルはどこだい? 「火で燃やされてしまったのさ」と、月は答えた。 火はどこだい? 「水で消されたのさ」。 水はどこだい? 「牛が飲んだのさ」。 牛はどこだい? 「地面の中へ消えたのさ」。...
第15編: 恋

第15編: 恋

第15編: 恋 取りつかれるとか、夢中になるというのは、よいことでもありうるが、誰が夢中になっているのか、夢中になる対象が誰なのかということにもよる。シッダールタに夢中になっているのなら、それはとても幸運なことである。崇高な人にそのような感情をもつのは、その人に品位と、よいカルマのつながりがあるということなのだ。...
第14編: タシ・ナムゲルのリメへの忠誠

第14編: タシ・ナムゲルのリメへの忠誠

1960年代初めのヒマラヤ地域は、すべてがばらばらになってしまったかのようだった。僧院は破壊され、偉大な師たちは殺されてしまった。多くの人々が住む場所を失った。そして、ツェワン・ペンジョルがケンツェ・ラブランのチャグゼの地位を退き、おそらく、多くの人びとはケンツェの系譜の運命と繁栄は終わったと思っただろう。...